ショックをビルシュタインに交換

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2023.06.03


去年末にランチョに交換して半年経ってないが早くも限界を感じた。クロカン走行に振った減衰力特性はどーにも馴染めない。当たりの柔らかいソフトな乗り心地を作り出しやすいものの、そう設定すると揺れ幅が増えてゆらっとした感じが残る。設定を変えても納得いく動きに追い込めない。大きめの石ゴロゴロの河原を低速で動く時はいい感じだったのだが、、、(そこを狙った特性だから当然か)。

9段階の設定で減衰力は変更できるものの特性は変更できない。同じ特性のまま柔らかいか固いかの調整。さらには走行中に変更することもできない。止まって各車輪裏にある固いダイアルをいじっていく必要がある。気軽に自分の好みの状態を設定変えて追い込めるとか、走行シーンで設定を変える、ってのは幻想だった。

とはいえ、以前のビルシュタインも特性は素晴らしいのだが低速での突き上げ感で不満があった。だから調整式を試すという意味でランチョへ行ったので、次のショックをどーするかは紆余曲折。


ギリギリまで迷ったのがTEINの減衰力コントローラーEDFC5のシステム。TEINの純正形状ショック(EnduraPro Plus)と組み合わせることで走行状態を判断してリアルタイムに減衰力可変をやってくれる。突き上げのないソフトな動きとコーナー時にロール速度を抑えて踏ん張り感を出すという相反する動きが可能になる。

G制御だけでなくジャーク(Gの変化量から先読み)制御も入っていてかなり理想的。資金貯めてこの方向か、と思っていたがよく考えると疑問が湧いた。俺はコーナーがそんなに不満だったか?と。ソフトなランチョだとコーナーでロール速度が早めだけど「こういう特性だ」と思って乗れば致命的でもなかった。

じゃあ何が不満なのかと言えば「直進時の車体の動き」。真っ直ぐ走ってる時に路面状況に影響されて上下に動く。パジェロは重心が高くて頭が重いので変な感じで左右にぐらつく成分も混ざる。この動きが最小&最短で収束しないと気に入らない。つまり真っ直ぐに走ってる時のフラット感の方が気になる。

で、気づいた。EDFC5は直進時に意味あるのか?TEINに質問したら直進時は制御入らないという回答だった。ということは直線時の車体の動きはEnduraPro Plusの特性が全て。つまり本質的にはビルシュタイン vs EnduraPro Plusってことになる。

ここで原点を思い出した。ショックの構造には単筒式と複筒式がある。単筒式はオイル量が多くて放熱に優れ、仕組み的にシャフトの動きはじめから正確な減衰力が出る。欠点はガス圧の関係でゴツゴツ感が出がち。複筒式は動き始めの減衰力が甘めで正確性も単筒に劣り、オイル量が少ないので熱ダレも不利。でも数が作られてるので安価で、ガス圧が高くないので突き上げ感のないソフトな乗り心地を作り出しやすい。

ビルシュタインは単筒式、ランチョやEnduraPro Plusは複筒式、、、そして大昔に複筒式のショックをいくつか使って最終的にビルシュタインに行き着いた。つまり、これまで納得してた直進時の車体の動きは単筒式の正確な減衰力によるところが大きいと思われる。ついでに突き上げ感も単筒式の欠点をキッチリ体感してたことになる。

となると、個人的な価値観では多少の突き上げ感に目をつぶってでも単筒式ショックがベター。事実上ビルシュタインしかない。


そこまで行き着いて、同じビルシュタインなら外したやつをオーバーホールしてもいいかと考えていた。のだが、ラインアップを見てたらV7x系とV9x系でラインナップが分かれてることに気づいた。

マニアなら知ってるがパジェロのV7x系とV9x系はフルモデルチェンジの扱いだが足回りの構造はまったく同じ。ショックとコイルはそのまま流用できる。V7xが柔らかすぎと指摘されたのでV9x系でバネレートと減衰力をほんの少しだけ高くした、という程度の違いしかない。

V9x系のビルシュタインだけ品番の最後がJになってるし、これはいったい何?ってことで問い合わせてみた。すると、、、V7x系の以前からあるビルシュタインはドイツでセッティングされた本国仕様。それに対してV9x系のは日本でイチからV93WとV97Wの実車を使ってセッティングを出した日本仕様(なのでJ品番のようだ)。だった。残念ながら本国仕様の数値データは日本に無いそうで具体的なセッティングの差は不明。

でも、普通に考えてドイツ仕様はアウトバーンを180km/hで走ることも想定に入ってるので前提となる速度レンジが高い(その弊害が低速での突き上げのような、、、)。日本でセッティングしたということは速度レンジはそこまで高く想定してないはず。ということは以前のビルシュタインよりも日本での走行にはベターなセッティングになってる可能性が高い。

うちのV73WはコイルはV97Wのに変えてある。コイルとのマッチング的にもV93WとV97Wでセッティングを出したビルシュタインの方がベターなはず。同じビルシュタインだが以前使ってたのとセッティングが違うってことでやや高いが勝負することにした。


上が以前から使ってたV7x系用のビルシュタイン(ドイツセッティング)。真ん中が今回購入したV9x系用の日本セッティング。一番下のはV97Wのノーマルショック。

ドイツ仕様と日本仕様はセッティングの違いだけだと思っていたのだが、そもそも日本仕様はブーツついてないし、付属ワッシャーとか外観の時点でビミョーに違う。本国仕様は説明書っぽいのが入っていたが日本仕様はショック入ってるだけで説明書など紙モノはなし。


本国仕様のブーツを外してみるとショックの筒の長さが違う。そしてバンプストッパーみたいなモノが入ってる。理屈的にストローク長はかなり短い。日本仕様のは純正ショックと全く同じ長さとシャフト構造になってる(各種ラバー類は純正のを丸ごと流用するっぽい)。


特性には関係ないと思うが取り付け部分の形状もだいぶ違う。同じビルシュタインではあるがモノとしては完全に別物。


ランチョを外す。ボンネットの中の補器類を外しまくらないと固定ナットにアクセスできないので一苦労。


コンプレッションしてショック外すのも一苦労。


今回はコイルとショック周りのラバー類の新品を入手しておいた。20年オーバーの酷使でどれも劣化してヒビ割れてるので全部交換する。


ビルシュタインに差し替えた。コイルを受ける皿の位置は最初からCリングが入ってた真ん中のままにした(純正ショックと比べるとこの位置がピッタリだったので変更せず)。


黄色いショックにカムバック。今回は1G組み付けをできるだけ正確に行う。以前もGをかけて本締めしてたが大体の感じだった。今回はスタビ影響がない状態でアームだけで支え、地面から車軸中心位置を左右で合わせて正確な仮想1Gを出して本締め。


リアショック。上が本国仕様で下が今回の日本仕様。同じに見えてブーツ外すと筒の長さがビミョーに違った。


フロントと同じく取り付け部分の形状も違う。


リアのコイル台座のブッシュもお疲れでボロボロ。


新品と入れ替えてリフレッシュ。


リアはコイル脱着すると作業は結構大変。ジャッキ使ってコイル縮めつつアームの連結ボルト入れるのに職人技がいる。そして今回はショックを縮めて上の台座にいれるのが難しかった。本国仕様だとガス圧の反発あるけど全力で縮めたらどーにかなったけど、日本仕様のは少しガス圧が高いのか縮められん、、、荷締めベルトをかけて戻らないようにしつつ体重かけてジワジワ縮めてどーにか取り付けた。難易度高い。

リヤも同じく正確な仮想1Gを出してから全てのボルトを本締め。整備マニュアルを確認しつつ丁寧にやったてたら丸1日消えた、、、そういう作業なのでよほどの拘りがなければDIYでやるのはオススメしない。


交換完了!走ってみるとめっちゃ良い。V7x系用の本国仕様よりも突き上げ感が小さい。というか個人的な感覚では突き上げが気にならないレベル。しっかりと減衰力を出しながらしっとり滑らかでフラット。

本国仕様のビルシュタインはもう少しだけ固い印象だった。しっとりと滑らかなフィーリングは同じだけど、その同じフィーリングのままもっと上の速度レンジを対象にしてるかのような感じ。日本仕様は少し当たりがソフトな気がする。やっぱり想定してる速度レンジの違いで差が出てるのか?

舗装が良くて速度出る場所では本国仕様との違いは感じないけど、荒れ気味で舗装継ぎ目が多い場所の低速走行では日本仕様の方が滑らか。V73Wはフロントが軽いこともあって本国仕様ではフロント側でゴツゴツ感があったが、日本仕様ではほぼ感じない。でも固く感じないけど揺れ幅は小さくて揺れは一発でスッと止まる。ほぼ100点。

ステアリングレスポンスも復活。クイックではないがダルな感じがなく自然なロールを伴って反応が良くナチュラル。そして無駄な揺り返しは極力早く収束してフラット。固く突っ張るのではなく程よく動いてスッと自然に減衰する印象。思えば本国仕様ではもう少しクイックに化けた気がする。やっぱり動き始めの減衰力が少し高いセッティングだったんだろな。

ランチョは高い勉強代だったが結果的にベストセッティングのビルシュタインに落ち着けたのでヨシとする。

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