TRS2AMに半年乗って思うこと

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2020.03.05


TRS2AM購入から半年。走行距離は2500kmをこえた。

感覚的には思うように距離を乗れてない感が強い。天気の巡りが悪かったり自転車いじってて乗るタイミング逃したり。なんか色々とタイミング悪くて細切れな走り方ばかり。それでも山方向に走ることが多いわりには距離走ってる方か。登りが遅くなりすぎないE-Bikeの恩恵。

半年間で色々パーツ交換して違和感や不満点はほぼ解消した。この段階での思うことをいろいろ書き連ねる。

 TRS2AMの購入は正解だったのか?


E-Bikeは進化の真っ最中。早いサイクルで新しいアシストユニットが投入されバッテリー技術も進歩する。短期間にE-MTBが新モデルもじゃんじゃん出てくることも予想の範囲。ユニットやバッテリーが変更されると電気的な互換性はなくなる。アシストのシステムとしてすぐに旧モデルになる可能性は高い。そんなタイミングで様子見することなくTRS2AMを買ってよかったのか?

高額なので迷いはあった。たぶんPSA1での2年間がなければ決断できなかった。PSA1で7千km以上走ったことでE-Bikeを体感として学んだ。良いとこ悪いとこ、自分にとって何が満足感になるのか?何をトレードオフできて何が譲れないのか?その辺がかなりクリアになった。さらにはBESVの対応の良さも体感した。

その土台があったからこそ思い切って購入できた。そして結果的には大正解だった。半年経過して選択できるフルサスE-MTBは増えた。でも、今の時点でも再度選ぶとTRS2AMになる。他メーカーのモデルではトレードオフの条件が合わない。結局、落とし所はTRS2AM。

発売と同時に買ったことでこの半年間を有効に遊べた。真っ先に決断し早くから遊べてる価値は大きい。人生は有限、先送りした時間は戻ってこない。さっさと決断してよかった。

早すぎて誰にも理解されないのは少数派好きでは当たり前のこと。


 E-MTBの価値は登りで楽しめること


E-MTBの価値は「登りで楽しめること」だと感じてる。

MTBは下るために登るモノ、下り性能が重要という人もいる。でも、残念ながらこの辺には下り性能を楽しめる環境はほぼない。山にあるシングルトラックは登山道かハイキングコース。歩き前提のトレイルをコソコソと間借りする雰囲気。PSA1でも問題ないぐらいの低速で気を使いながら下るのがせいぜい。

下り好きな人はダウンヒルコースへ行くことになる。コースにはリフトやゴンドラがある。E-MTBはいらない。

私がE-MTBに求める価値は登り方向での走り。路面悪くて傾斜キツい場所はテクニカル。走行ラインやタイミングをミスると登れない。そうやって思いっきり走っても速度は10km/h前後。低速なのでハイカーと出会っても不快感は与えにくい。この遊び方ができるのはE-MTBだけ。

最近は登りで遊んで下りは舗装路に出ることが多い。徐行で下ってもあまり楽しくないので舗装路で一気に下って別の山へ移動する。そしてまた登り方向でトレイルに入る。

登りの能力はパワーだけの話ではない。トルクセンサーの精度、繊細な反応、レスポンス、出力トルク、足裏にシンクロした制御。自転車として楽しく登るためのE-MTB性能は奥が深い。250Wなら同じってほど単純じゃない。メーカーやユニットで特性バラバラ、考え方もバラバラ。そこがまた面白い。

私の場合はトレイルだけでなく舗装路ロングも含めて雑多な場所を走る。行った先で見つけたダートにじゃんじゃん寄り道する。そういう走り方でも「登り」性能の価値は大きい。想定外の激坂があっても時間ロスは最小限。思いつきでどこでも散策できる。


 TRS2AMの登り性能


購入当初はPSA1との比較なので登坂能力の高さに感激した。しかし、半年も乗ればアラが見える。

STEPS E8080は登りを楽しめる最低限の性能って感じ。許容範囲に収まってるが細かい文句はいろいろある。アシストユニットは今後どんどん高度に進歩するはず。そういう意味であえてシビアに評価してみる。

250W - 70Nの出力はまずまずだが最大トルクはもうちょい欲しい。フロントが浮くような超激坂で微妙にトルク負けするシーンがある。シビア状態では強い脚力を追加してギリセーフって感じ。もう少しトルクがあった方がバランスいい。

ペダル入力に対する反応レスポンスはまぁまぁ速い。でも慣れてしまうと僅かな遅れが気になる。繊細なペダル入力で細い出力も制御できるが、足裏と完全シンクロまではいかない。特にペダル入力を止めてから出力が止まるまでのラグが大きい。クランクを戻しながら「カン、カン」と断続的にペダル入力する、って状態ではシンクロ感とは程遠い。

規制に対してマージンが大きいのは以前から指摘してる通り。トレイルでは速度遅いので目立ちにくいが大きな欠点。舗装路の緩い登りでは他メーカーの最新ユニットとハッキリ差が出るはず。ユニット能力の問題ではなく設定の問題。

どれだけ登って遊べるかはバッテリー容量&能力に依存する。BESVオリジナルのインチューブバッテリーは504Wh。トレイルの登り中心で遊ぶと移動を含めた実走行時間で3時間ぐらいで空。半日遊ぶのが限界。標準的な容量ではあるが、できれば650Whとか700Whクラスが欲しい。海外モデルだとそのぐらいの容量が増えてきてる。本気で遊ぶと504Whでは足りない感がつきまとう。

MTBとしての登り性能は足回り。標準のフォークとリアショックは価格相応(コスパは高い)。遊べる性能はあるが素晴らしくはない。ここは好みで交換して改善するモノと思った方がいい。その分、手を出しやすい価格になってる。まずノーマルで遊び始められることに価値がある。

総合的には今選んでも問題はない。E-MTBとして登りで遊べる基本性能は押さえてる。現時点でも素材としてのコスパは高い。


 E-MTBの重量はトレードオフ


TRS2AMはSサイズで23.2kg(44.5万円)重いのか軽いのか?脱着式のバッテリーインフレームなことを考えると軽い方だと思う。

E8080は2.9kg、バッテリーは2.7kg。脱着式のインフレームにするとフレームに開口部が必要になる。BBユニット装着の強度確保など含めてどーしても重めのフレームになる。さらにTRS2AMは価格が安いので構成パーツも安物。ホイールなども軽くはないと思われる。

同クラスの人力MTBより7kgぐらい重い車重、ってのが共通認識。この部分に魔法はない。重量差は必ずトレードオフがある。構成と価格を考えるとTRS2AMはうまくまとめてる方だと思う。

現時点で発表されてる主なE-MTBと比べてみると、


SPECIALIZED LEVO SL COMP

アルミモデルで19.5kg(57.2万円)。現時点で最も軽いE-MTB。

TRS2AMと3.7kgも違う。そのカラクリは、BBアシストユニットで1kg、バッテリーで1kgダイエット。残り1.7kgはフレーム周りで軽くなってると思われる。普通のMTBとほぼ同じ構造のアルミフレームの中にバッテリーを直接入れてる。バッテリーは内臓式でフレームに開口部を作らないことで重量増を避けてる。

何がトレードオフになってるか?軽く小型なBBアシストユニットは240W - 35N。バッテリー容量は320Wh。メインバッテリーは簡単に外せないので充電は自転車本体に接続が必要。トルク、容量、使い勝手を減らして軽さを手に入れてる。



GIANT TRANCE E+ PRO

アルミで24.3kg(58万円)。スペシャのと対照的で重い。

パッと見でわかるがBBユニットがでかい。ヤマハと共同開発のユニットは最大トルク80N。バッテリー容量は500Whクラスで同じ。ユニット本体とフレーム強度確保で1kg程度重くなってると思われる。重量増を許容して大きいトルクを手に入れてる。



SCOTT GENIUS eRIDE JAPAN SPEC LIMITED

アルミで23.4kg(58万円)。

正直、これはTRS2AMと同時期に発売だったらグラグラした。Bosch Performance CXの価値が大きい。最大トルク75Nで規制までのマージンも少ない。ユニットとしては現時点で最も好バランスだと思う。バッテリーも500Whで海外版では650Whもある。

価格がTRS2AMより13.5万円高いのがトレードオフ。アシストユニットの価値をどう見るか?採用パーツの価値をどう見るか?



他にもフルサスE-MTBはたくさん発表されてるので選択肢は増えた。どの方向が良いのか?どうトレードオフするのが良いのか?その辺は使う側の価値観で決まる。選べる幅が広いのは良いこと。

個人的にはE-MTBには登りを求めるのでトルクと容量は大事。LEVO SL COMPの軽さは魅力だが前提条件が崩れる。脱着できないバッテリーも出先での充電で詰む。GENIUS eRIDEが高バランスかな。価格面も考慮するとTRS2AMも高バランス。ただし、それも現時点の話。おそらく進歩が早くどんどん変化する。E8080の次が出ればあっさり入れ替わる可能性が高い。

結局のところ半年前にTRS2AMを選択して大正解。E-MTBの激動の時代を眺めつつTRS2AMで徹底的に遊ぶ。まだまだ差は小さい。待つより、早く入手して早く遊ぶ方に価値がある。

今から選ぶ人は楽しく悩んで下さい(笑)
自分が楽しければ正解。


 半年間で変更したパーツ


基本的にノーマルで1ヶ月半は頑張った。素性を知るには最初から大きな部分を変えてはいけない。まずは徹底的に乗る。見えてくる不満を把握しながらひたすら乗る。

最初は耐えれなくても慣れると気にならなくなる部分もある。そうやって自分にとっての優先順位を洗い出す。1000kmぐらい走れば明確になってくる。その結果、走りに関係する部分の交換したパーツは、


フロントフォークをBomberZ1に交換

サンツアーフォークは耐えられなかった。単純に言って初期作動が硬くて乗り心地が悪い。スプリング式なのでバネレート以上には柔らかくできない。

FOX相当のBomberZ1に交換してセッティングも詰めた。当たり前だけど効果は絶大。だいぶ上のグレードのMTB相当に化けた。TRS2AMの足回りで最初に変えるべきパーツはフォーク。


ブレーキローター交換、リアを203mm化

これはなんとなく。ブレーキ強化はこだわるのでリアを203mm化したかった。適合するXTのローターを見つけたので前後とも交換。効果はリアが大きくなった分、少し余裕が出たって程度。見栄えの方が絶大な効果。


リアショックをFOXに交換

標準のROCKSHOKSには違和感があった。動きの特性として好みじゃない。距離乗っても違和感消えないので交換を決断。RZ120でFOXの特性は自分に相性いいことは確認済み。効果はやはり大きかった。一瞬でリヤの動きは気にならなくなった。相性がいい特性ってこういうこと。


ブレーキを4ピストンのXTに交換

E-Bikeは山を登れる。登ると下ることになりブレーキ負担は増える。COHO XC付きで超激坂を下ることも多い。ブレーキ能力は過剰なぐらいでちょうどいい。

効果は十分。純正でも制動力としては十分だったが、それを軽く上回る。コントロール性もよくて減速を完全に支配下にできる。止まる性能にこだわる人にはオススメ。


Di2化と11-46の11速化

スプロケは標準では10速。許容範囲ではあるがアシスト切れの速度域付近のギヤ繋がりが悪い。重すぎ、軽すぎでギヤチェンジがハンチングしがち。

11-46の11速にすることでギアピッチが狭まってハンチングは解消する。さらに一番軽いギヤが42から46になり、超激坂で余裕が生まれる。効果絶大なので11速化はオススメ。最初から11速のモデルは11-46が採用されてるようだ。Di2化は敷居高いので電動シフトにこだわる熱い人向け。極端なメリットはない。趣味の世界。


こんな感じで半年で20万以上を追加投入したことになる。現時点の実質的な車体価格は65万円ぐらい。もっと高い車体が買えた?と考えがちだけど違う。

高い車体なら自分の感覚にフィットするわけじゃない。買ったとこから自分の感覚に合わせる調整が始まる。結局はパーツ交換するので追加のコストは必ずかかる。今の段階でTRS2AMは私にジャストフィット状態。高い車体と乗り比べても負けない。なにせ全てを私の好みに細かく合わせてる。自転車ってそういうモノ。

自己満足って意味ではTRS2AMは素晴らしい。真っ先に発売してくれたので誰よりも先に買って乗って遊べた。他メーカーが追いかけて発表しているが乗って遊べるのはまだ先なモデルが多い。そんなタイミングでTRS2AMは乗り倒した上で自分好みに熟成完了。あとはひたすら乗って遊ぶだけ。

迷ってる人は早く買って遊ぶことを推奨。待てば待つほど良いのが出てくる。待つほど買えなくなる。遊ぶ時間が減る。自転車は乗ってナンボ、遊んでナンボ。と、私は思う。


 発生したトラブル


半年間でトラブルはいろいろあった。発売と同時に飛びついてるのである程度は仕方ない。

BESVの対応は良いので安心感はある。ただし、まだBESV側に蓄積されたトラブル情報は少ない。初トラブルは自力調査&自力解決の能力がないと時間的ロスは大きめ。今の段階では仕方ない。改善速度は早いので大きな問題ではない。


発生したトラブル

エラーW011(2019/9)
  -> スピードセンサーの固定を緩めにして復帰。

左クランクが緩んで抜ける(2019/9)
  -> 純正採用のクランクの問題。シマノ製クランクに変更対応。

リアフリーハブから異音(2019/10)
  -> フリーボディの故障っぽい。ホイールごと交換対応。

エラーW011再発(2019/10)
  -> センサー固定に両面テープを併用して歪みが発生しないように対処

バッテリーからコトコト音発生(2019/12)
  -> 対策版バッテリーと交換対応。
  -> 2020/2、対策版のはずが古い未対策版だったので再交換対応。
 
リアハブから異音(2020/2)
  -> フリーボディを固定するネジ外れ。自力で固定し直して対処。


要するに、

「シマノのスピードセンサーは繊細」
「フリーボディ付近はE-MTBの弱点」

センサーは固定時の歪みを考慮すれば回避可能。フリーボディー周辺はBBユニット方式のE-Bike特有の弱点。ここには激坂登坂時にチェーン経由でものすごい力が加わる。ついでに言えばチェーン自体も弱点と思われる。

登りが楽だなー、って程度の場所しか走らないなら問題にならない。人力MTBでは登れないレベルの傾斜を頻繁に登る時の話。私の場合は登りでの遊びがメイン。当たり前のように負荷高い状況が多い。理屈的な強度は確保されてるはずだが実績は少ない。実力値はこれから情報が集まる段階。まだまだ未知な部分がある。趣味としてはそういう部分も楽しみのうち。

半年間で色々な新しいことを学びながら遊び倒した。
E-MTBの世界は面白い(^^)


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